妊娠鑑定時に”双子です”と聞くと多くの農家さんは残念な表情を浮かべます。
これは、なぜか?
分娩時の事故率は単胎は6.3%だったのに対し、多胎は33.3%と報告されています。
双子妊娠だからといって、単体妊娠と比べて半分のサイズの胎子が生まれることはありません。
比較的、大きな胎子が二頭生まれてくることが一般的です。
これは、単体妊娠と比較し胎子を含めた子宮の容積が1.5倍以上に増すため、母牛の腹腔内で消化管を圧迫し、乾物摂取量を低下させます。そして、負のエネルギーバランスとなりケトーシスに移行、さらに分娩ストレスで周産期疾患につながり、難産や胎盤停滞はその後の受胎性に悪影響を与えます。
双子妊娠と診断された場合は、どう対処すれば良いのか?
勉強していきましょう。

双子妊娠が起こる原因
現在のホルスタイン種の双子発生率は8%程度と言われています。未経産は1%程度です。
双子を分娩する親は、また双子を分娩することを聞いたことや経験されたことはないでしょうか?
しかし、この双子の遺伝率はそれ程高くなく双子発生の遺伝率は比較的低いとされています。具体的な数字は研究によって異なりますが、通常、双子発生の遺伝率は1%から5%の範囲内で報告されています。
つまり、遺伝以外の環境要因や個体能力によって影響を受けます。
過去数年間にわたって85件の酪農家さんで多胎分娩率を調査したところ0%~15%の間で推移していることが分かりました。

上のグラフを見て頂くと縦軸が多胎率(双子分娩率)、横軸が農家戸数です。0%の農家が10件程度で、10%近くある農場が5件程度あり、0%~15%の範囲に収まっています。
みなさんの農場の多胎率はどれくらいでしょう?是非、調べて下さい。
双子分娩と乳量の関係性

先ほどの農家で乳量と多胎率の関係性を見てみると、乳量が増えるにつれて多胎率が増えます。
少し前のデータになるので、現在の多胎分娩率はさらに上昇していると考えられます。
双子が増える原因

乳量が増えるにつれて、双子の発生率があがる理由は
泌乳量の増加は飼料摂取量をもたらし、これは、肝臓における血流量増加につながる
肝臓での性ステロイドホルモンの代謝(インヒビン・プロジェステロン)が亢進し2個排卵する
エストロジェンの代謝亢進も起こるため発情行動の時間短縮・微弱化が起こる
双子診断
上記ように双子妊娠率は農家によって違い、双子を妊娠している場合の事故率は30%にもなります。
まずは、事故率を低減させるためには双子の妊娠診断が大切になります。
熟練者は直腸検査で双子診断をできると聞きますが、相当な腕が必要です。
しかし、エコーを用いれば比較的簡単に診断することができます。
特に双子の分娩が多い農家さんは必ず双子診断を行ってください。
双子診断のポイント
牛の双子は95%が二卵性双胎のため卵巣に2つの黄体が形成されています。
エコーで妊娠鑑定する場合は、必ず左右の卵巣を確認し黄体の数を確認します。
黄体が二つ存在した場合の双子確率は50%です。この場合は、じっくり双子妊娠を確認する必要があります。
牛の双胎妊娠には2種類あります。
一つ目のパターンは片方の卵巣に黄体が二つ存在=片側性双胎です。比較的に確認しやすく、ツインラインが観察されます。
二つ目のパターンは左右の卵巣に黄体が存在=両側性双胎です。同じ胎子を2度うつしてしまう誤診を招きやすいので注意してください。
また、追い移植をしている場合もしっかり双子診断を行って下さい。

胎子の右側に見える輪がツインサークルです。双子の可能性が高いので反対側子宮を精査して下さい。
双子診断を正確に行うことが双子分娩の事故率を下げ・次産次の繁殖障害を防ぐ第一歩です!
PAGで妊娠鑑定されている方は、双胎は単よりも妊娠期間中高く推移することから、双子診断として用いられることができるとも言われています。
双子妊娠の流産発生率
単体妊娠と比較して双子が流産率が格段に上がることも理解しておく必要があります。
流産率は片側性双胎の場合は32%、両側性の場合は8%との報告があります。
子宮の片側に二子妊娠している片側性双胎は流産率が高くなと覚えておくといいでしょう。
双子と診断したのに1子のみ生まれてきたら
流産率が高いことからも分かる通り、自然に減胎し、分娩時に単胎で生まれてくるケースもあります。
このようなケースはフリーマーチンが疑われるので膣長検査を行って下さい。
生まれてきた子牛の膣長は正常で15センチあります。一方、フリーマーチンは5センチ程度しかなく、陰毛が長かったり、外陰部が小さいこともあります。授精時に使うシース管を用いるといいでしょう。
双胎の予防法
双子の原因は冒頭に述べたように、肝血流量の増加によって性ホルモンの代謝亢進が起こって2排卵してしまうという仮説が有力視されています。
一つ目は肝臓の血流量を一気に上昇させないために飼料を頻回投与する。餌槽が空となっている時間が長いと固め食いの原因となり、一気に食べると肝臓の血流量が増加します。このドカ食いを予防することが重要で、暑熱ストレス・サシバエ・蹄病・過密・滑りやすい牛床といったアニマルウェルフェアの観点も大切となります。
二つ目は授精時にエコーで排卵可能な卵胞が2個確認された場合は、授精を避けて受精卵移植を行う。同サイズの卵胞が複数確認できた場合は2排卵する可能性が高まります。双胎発生率の高い農家さんで特に有効な方法だと思います。
三つ目は第一卵胞波の主席卵胞は、2個排卵が多くなることが知られています。ホルモン剤を投与して黄体退行や排卵誘起を行う場合は、第二・三卵胞波を狙ってください。
双子妊娠した場合の乾乳管理
双子を妊娠した場合、通常の妊娠期間より早く分娩します。
授精後270日前後で生まれてきます。
そのため、分娩予定日の70日前に乾乳をおこないます。
栄養濃度を高めた餌を給与しても、そもそも食べる量が減るので、かえってバランスの崩れた餌となる可能性があります。そのため、双子妊娠牛にはなるべく快適な環境を提供することが大切になります。
良好な粗飼料・暑熱対策・護蹄管理といった基本的なことを見直してみてください。
きっと、双子分娩を正常に乗りきるカウコンフォート技術があれば、もちろん単体妊娠の乾乳管理は問題ないでしょう。
分娩が始まり一子目が出てきたら、二子目の確認も行ってください。難産の発生率も上がりますので、分娩時に異常がないか注意深く観察してください。
追記 せっかく双子妊娠と診断されているのに、分娩時に忘れているケースもあります(苦笑)双子妊娠のメモやマークをどこかに入れておきましょう!
まとめ
双子分娩は乳牛の健康と生産性にさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
双子妊娠が起こる原因と予防法、妊娠した場合の対処法を知ることで、双子分娩のリスクを軽減することが可能です。
- 遺伝的考慮の考慮:遺伝率は高くないので、そこまで考慮する必要はないと言えます。
- 栄養管理(乾乳管理):肝血流量の上昇を抑えるため、なるべく固め食いが起こらないように管理を見直しましょう。70日前に乾乳を行い、適切な栄養管理とカウコンフォートを徹底することによって分娩時のリスクを減らすことができます。
- 適切な繁殖管理:授精時にエコーを使うことによって、双子出産のリスクを軽減することができます。
- 妊娠鑑定:妊娠鑑定時には必ず双子診断を行ってください。片側性双胎なのか両側性双胎かをメモするといいでしょう。
- データの解析の利用: 双子分娩の傾向やパターンを識別するために、データを収集し、双子分娩のリスクを特定し、その管理戦略を考えることが可能です。
現在は、これらの予防方法を採用することで母子出産のリスクを軽減することは可能ですが、ただし100%の予防は困難です。注意深い管理と適切な繁殖戦略を採用することで、この双子リスクを最小限に抑えることができます。
双胎妊娠を極めよ~!!



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