初回授精の重要性について理解いただけましたでしょうか?
まだ不明な点があるという方はこちらの記事を参考に。
残りは、2回目移行に発生する再授精をどのように戦略立てるかです。
再授精の授精間隔を見極めて、繁殖管理の流れを完了させましょう。
2回目以降の授精〜難点〜
1回目の授精はどんな治療を行おうが対象牛は全て妊娠していないので、流産させる可能性は0%です。
しかし、2回目以降となると局面が変わってきます。1回授精しているので、妊娠している牛が混ざってきます。
妊娠している牛が混ざると以下の様なケースが生じます。
- ケース1.「21日前後に強い発情が来た」
- ケース2.「発情が来ない牛は受胎しているのか?ただ単に発情を示さない牛なのか?」
- ケース3.「発情らしいものがあるが、はたしてそれは本当に発情なのか?授精したら流産させてしまう可能性はないか?」
1度授精を行うと以上の様なケースが生まれてきます。
ケース1.これはそのまま授精すればOK。全ての牛がこのケースに当てはまれば悩む必要はないのですが、そうもいきません。受胎率の高い農場でも50%は回帰発情がきます。ケース1の割合が増えると繁殖管理は楽になります。
ケース2.問題はこのケース2です。発情が観察されないため、通常は妊娠していると考えられます。しかし、それが正しいとは限りません。妊娠+割合はどれほどでしょうか?ケース2の問題を深掘りしていきます。
ケース3.発情を一生懸命見つけようとすると、弱い発情でも気になります(弱い発情を見つける技術もとても大切です)。授精して1週間も立たないのに発情がきた!数日前に授精したのにまだ騒いでいる!回帰発情か?判断に悩む!このケースは授精師さんを悩ませます。また、妊娠黄体と発情期の卵胞は、ときどき誤診する可能性がどうしてもあります。近年は、授精師さんもエコーを携帯しているのでケース3の問題はほぼ解消したように感じます。ケース3は技術と道具で問題を解決できるでしょう。
さて、ケース2をどう解決していくかです!ここからが本題です。
まず、自分の牧場の平均受胎率を知る
まずは、自分の牧場の平均受胎率を知りましょう。
平均受胎率20%だとしたら、10頭に授精したら8頭は回帰発情がきます。これはかなり一生懸命、回帰発情を見つける努力が必要です。
平均受胎率40%だとしたら、10頭に授精したら6頭は回帰発情がきます。平均受胎率が高い農場は回帰発情も比較的容易にみつけれる傾向があります。
まずは、自分の平均受胎率から、何頭くらい割合で回帰発情がくるか頭にいれておくといいでしょう。
決して、授精したからといって安心はしないで下さいね。
再授精間隔を知る
分娩間隔400日を切るためのステップ5に記載した不受胎牛に対してどれくらいの間隔で授精できたかを調べましょう。
ケース2に問題がある事例を紹介します。
下の表をご覧ください。

18-24日Daysの行が不受胎牛の回帰発情に対してどれだけ授精できているかを示しています。
この表では18-24daysの割合割合が18%となっており、不受胎牛に対して18%(おおよそ5頭に1頭)しか授精できていないことを示しています。さらに不受胎牛に対して再授精するまで2サイクル以上(Over48days)の割合が40%もあります。これは、妊娠鑑定をして不受胎と診断し、授精するまでかなり時間を要していることを意味しています。
回帰発情を効率的に発見できていない牛群はこのようになる傾向があります。
さて、どうやって18-24daysの割合を増やしていきましょうか?
目標は18-24daysの割合を40%にして、その受胎率40%以上です。
かつ、Over48daysの割合を限りなく0%に!
ケース2の問題をどのように解決するか?
授精後26日~40日程度の妊娠鑑定をした際に、妊娠+割合をざっと計算してみてください。
今月は10頭妊娠鑑定して8頭受胎だな!妊娠+割合は80%。
一方、今月は10頭妊娠鑑定をして4頭受胎だな!妊娠+割合は40%。
基本的に回帰発情を発見できなくて妊娠鑑定に至っているので、妊娠+割合が50%を下回っている状況ですとケース2の問題は深刻です。妊娠+割合が80%を常時超えていたらケース2の問題はクリアされているでしょう!
ケース2の問題は比較的やっかいですが、これを解決しないと継続的に良好な繁殖を維持することは困難となります。
がんばってケース2を克服しましょう。その方法は、
- まずは、意識的に回帰発情を発見してみる
- 発情発見ツールに頼ってみる
- リシンクプログラムを使う
- 究極の方法
まずは、意識的に回帰発情を発見してみる
回帰発情の予定日辺りを注意深く少なくとも1日3回は観察してください。
発情の発見はこちらの記事を参考に。
この方法で問題が解決するなら、手間というコストだけで最も経済的な解決策と言えるでしょう。
この回帰発情の発見は、搾乳、排糞、餌やりと同等の重要な業務として考えてもよいのではないでしょうか!
発情の発見(回帰発情)は非常に重要なタスクであるため、コストを投じて発情発見ツールを導入する農場が多いです。
まず、意識的に発情発見を行って、18-24日の授精割合が上昇するかどうか試してみましょう。
意識的に発見するだけでグッと繁殖が良くなる農場もあります!
発情発見ツールに頼ってみる
なかなか、1日に3回も牛の発情行動を観察する時間が取れない方が大半ではないでしょうか。
そういった方は反芻や行動を検知するセンサーを搭載した発情発見ツールに投資するのも一つの手段です。経費はかかりますが試してみるのもいいでしょう。
一般的な発情感知センサーの費用は、個体ごとのセンサーの価格と、それらを受信・解析するためのデータ管理システムの導入費用から構成されます。機能によって異なりますが、1個体あたり数千円から数万円程度の範囲であることが一般的です。これ加えて通信機・通信費等の費用が必要になり、大規模システムになると数百万円規模になります。
これだけの費用を掛けても、発情を見つけ出せる技術能力は費用対効果が得られることを物語っています。
カメラもいい手段かもしれません。高性能な4Kカメラは牛の耳標まで観察でき、時に耳標にとまっているハエまで綺麗に見えるすごものです。こちらも機能によって数十万~数百万円の経費がかかります。録画機能もあるのでそのときは発情のタイミングで見ていなくていいですが、半日以内に見るという確認作業は必要です。
このようなシステムを導入しても、再授精がコントロールできているか必ずチェックしましょう。ステップ5の授精間隔を調べれば一目瞭然です。
下の表は搾乳システムに発情発見が組み込まれた装置を導入した事例です。パーラーに牛が入ったら、発情牛を検知して「この牛は今日発情ですよ~」というランプが点灯します。時代は進化していますね。このシステムを導入した後の授精間隔を分析すると

18-24Daysの割合が44%もあります。Over48Daysの割合が11%しかありません。このような状態になると妊娠鑑定を行えば妊娠+割合は80%を越えます。要は18-24Days(回帰発情)を見つけているので不受胎牛は妊娠鑑定するまでに至らないのです。
発情発見ツールを導入するもの良いキッカケになるかもしれません。わたしも、新しい道具やシステムを購入したときはワクワクするものです。
発情発見ツールを導入した際の注意点も確認しておいて下さい。
- 発情発見ツールや技術の導入は重要ですが、それらを適切に活用するためには人間の判断と経験も欠かせません。道具や技術は補助的な役割を果たすものであり、最終的な判断や決定は人間が行うべきです。
- 農場の管理者や作業員は、発情発見ツールのデータや情報を正しく解釈し、適切な判断を下す能力を持つ必要があります。発情のサインや行動パターンを理解し、ツールからの情報と合わせて繁殖管理に反映することが重要です。
- また、発情発見ツールの効果を最大限に引き出すためには、適切な設置や操作、データの記録と分析、アクションプランの作成など、継続的な取り組みが必要です。ツールを導入しただけではなく、それを使いこなすための教育やトレーニングも重要です。
- 最後に、ツールや装置に頼り過ぎず、人間の判断力と経験を活かして繁殖管理を行うことが求められます。バランスの取れたアプローチを取りながら、効果的な繁殖管理を実践することが肝要です。
どんなに優秀な発情発見ツールを使っても、ケース2の中には無発情や胚死滅牛が含まれているので100%不受胎牛を摘発することはできません。どんなに頑張って発情を見つけようとしても発情行動を示さない牛はいます。栄養学的・繁殖障害もしくは遺伝的問題な問題も含まれているかもしれません。
18-24Daysの割合が40%以上を目標として下さい。
これらの発情を見つけにくい不受胎牛に対して、2回目・3回目の授精をいかに早く、そして高い受胎率を追求する為にリシンクプログラムという方法もあります。
リシンクプログラムを導入してみる
「リシンクプログラム」は、授精後の18-24日間の割合を増やす方法ではありません。最も大切なことはやはり回帰発情を発見することです。
リシンクプログラムの主な目的は、回帰発情を発見できなかった牛を対象に、36~48日の授精割合を増やし、かつ高い受胎率を達成することです。
様々なリシンクプログラムが提案されていますが、ここでは実行が比較的容易なオブシンクプログラムを用いたリシンクプログラムについて説明します。

AI後26~31日の間に妊娠鑑定が可能な場合
オブシンクを成功させる秘訣はオブシンクの開始時期でした。
この絶好の開始時期はAI後26~31日にあたります。そこでこの時期に妊娠鑑定を行い妊娠ーでしたら、オブシンクを開始します。
AI後26日:妊娠ーと診断したらGnRH投与
AI後33日:PG注射
AI後35日(夕方):GnRH注射
AI後36日(午前中):授精
これで回帰発情を逃しても一番高受胎率が見込める時期にオブシンク授精が可能となります。開始タイミングはAI後31日まで幅があります。
AI後26~31日の間に妊娠鑑定が不可能な場合
繁殖健診は通常、2週間に1度行われます。そのため、すべての牛に対して妊娠鑑定を26~31日で行うことは難しいというが現実です。
結論から言うとAI後32日~38日にPGを投与すれば良いのです。次回の繁殖検診時にその時期の妊娠鑑定になる牛は繁殖検診の1週間前にGnRH製剤を投与しておきます。
妊娠鑑定-だったら、PGを投与して、2日後の夕方にGnRHを投与して、3日後に授精でオブシンク完了です!
AI後26~31日牛は前述通り妊娠鑑定-だったらオブシンク法を開始します。
ただし、この方法の欠点は、受胎している牛に対してもGnRHを投与するため、無駄な注射となってしまう可能性がある点です。
究極の方法
これは、御自身が直腸検査・エコー技術を習得しちゃえば良いんです!
直腸に手を入れて粘液がダラーって出てきたら発情!です。子宮が硬くなっていたら発情かも?です。
卵巣が触れるようになったら、黄体があれば発情ではありません。
エコーを子宮や卵巣にあてることができたら、より正確に発情を診断することができます。
この技術は一朝一夕で習得できる技術ではありません。
お近くに良き理解者がいましたら、「どうしても発情発見率を上げたいんです!教えてぇ~(笑)」って言って相談してみて下さい。
まとめ
結論、どんな方法を使ってもいいです!
自力で回帰発情を見つける!
発情発見ツールをつかう!
リシンクプログラムを使う!
究極の方法を習得する!
結果が全て!!!18-24Daysの授精割合を40%以上に、かつその受胎率を40%に!かつ、Over48Daysの割合を減らしましょう。
これで、間違いなく分娩間隔400日をきることができます!

18-24Daysの割合が16%から37%に上昇、その受胎率が40%以上になると、牛群の総合指標を示す妊娠率が12%から21%と妊娠率20%を超えます。
2回目の授精・3回目の授精をコントロールできたら持続的に良好な繁殖成績を維持することができます。つまり、安定した出荷乳量を維持できるでしょう。
最終的には授精の基本が大切となってくるかもしれません。基本的なことを改めて見直して再授精の重要性を考えていきましょう。
- 1. 発情行動の教育 牛の発情行動や行動パターンを理解し、従業員に対して正しい教育を行いましょう。発情を正確に判断する能力が向上し、発情発見率が上がるでしょう。
- 2.日常の観察と記録 日常の飼育に関して、牛の行動やサインを随時観察し、正しい記録や情報をスタッフで共有します。牛の行動パターンや食欲などの変化を記録し、発情のサインを認識することで、発情の発見率を向上させることができます。
- 3.発情発見ツールの活用 発情センサーを導入することで、牛の活動や行動パターンの変化を自動的に発見することができます。センサーが発するアラートやデータを確認することで、発情のタイミングを逃す機会を減らすことができます。
- 4.繁殖管理の改善 適切な繁殖管理を行うことも発情発見率を向上させるポイントです。適切な間隔で繁殖健診を行い、戦略的に授精計画やプログラム授精などを効果的に実施することで、発情の把握や繁殖管理の成功率を高めることができます。
- 5.技術の活用 画像診断を活用することで、牛の生殖器の状態を評価し、発情の現状をより正確に把握することができます。専門家のサポートを受けることで、農場スタッフが直腸検査・エコー検査を行うことも可能です。これによって高い発情発見率を実現することができます。
これらの方法を組み合わせて適用することで、牛の発病発見率を向上させることができます。
再授精を極めて継続的に良好な繁殖を維持しましょう。



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