薬液注入主体のフレッシュチェックからダブルオブシンク法へ

受胎率

先日、ダブルオブシンク法のメリット・デメリットを解説致しました。実際、このプログラムを導入して上手くいったケースをご紹介します。

ダブルオブシンク法がもたらす恩恵

結論

発情発見に費やす時間を短縮できる

ほぼ全てに牛に分娩後70日前後で初回授精が完了する

分娩間隔400日を切る為の強力な武器になり得る

農場の概要

タイストールで片側50頭の100頭牛舎です。メインとなる労働力は二人。平均乳量は9000~9500キロです。

明らかに労働力不足が起こっている状況です。二人で日々の仕事に加えて100頭牛群の発情発見を行うことはとても大変です。ですが、繁殖を回す大切さを実感されていたので、毎日朝昼晩と牛のお尻を観察し、発情粘液を観察するとともに、フレッシュ牛で白濁粘液を出している個体もチェックしていました。

分娩後40日程度で白濁粘液を出している個体が多い!気になる!

うちの牛群は分娩後いつまでも白い粘液を出している牛が多いから薬液注入して欲しい!が畜主の要望でした。フリーストールとは違いタイストールは運動できないので子宮の回復が遅いのだと畜主の方と認識していました。

そこで、白濁粘液を出してる牛の治療を行うために分娩後フレッシュチェックを一生懸命、行いました。

繁殖検診は2週間に1度行い、100頭いるとフレッシュチェック、未授精牛、早期妊娠鑑定、再妊娠鑑定の診断で毎回20〜30頭の検診頭数となり検診だけで1時間くらい時間がかかります。

フレッシュチェックは分娩後40日前後で行います。

白濁粘液を出している個体に加え、エコーで子宮内膜炎を疑う個体には

・黄体形成が認められたらPG投与

・黄体形成が認められない場合は子宮内にイソジン50ml+50%ブドウ糖液40ml注入

これを、フレッシュチェック時の主な治療としました。薬剤に関しては試行錯誤し決定しています。

分娩後40日で黄体形成がある牛は全体の40%程度でした。黄体形成が認められる牛は子宮の回復もほぼ問題ありませんでした。

ポイントは分娩後40日程度で黄体形成が認められない60%の牛たちです。黄体形成が認められないということは初回排卵(初回発情)が来ていません。発情が来るたびに子宮は綺麗になっていくので、これらの牛は子宮の回復遅延が起こっていると考えられます。

この黄体形成がなされていない牛たちに一生懸命、薬液注入を実施したのです。

分娩後の薬液注入の結果

結果は上の表に示す通りで正常な牛はフレッシュチェック時は無処置です。畜主が確認する排濃に加えエコーで内膜炎と診断した牛は黄体があればPG、黄体が無ければ薬液注入を行っています。子宮内膜炎牛の平均治療回数は1.3回です。

緑ラインで示してある箇所をご覧下さい。フレッシュチェック時に子宮内膜炎と診断し黄体がない牛を示しています。黄体がないため初回授精までには70日程度の時間はかかりますが、初回受胎率は31.4%とフレッシュチェック時に正常と診断した牛と同程度の初回受胎率でした。

この結果から薬液注入を行えば正常な牛と大差ない初回受胎率にはなる!ことが分かりました。

一方、黄体がある子宮内膜炎にPGを投与しても初回授精は速やかに行えるものの受胎率は低い結果が本研究からは得られました。

子宮内膜炎の診断基準です。強いエコージェニックラインや貯留物が認められた個体と、畜主の日々の観察で排濃が認められる個体を子宮内膜炎と定義しています。

排濃に関しては膣(膣炎)もしくは子宮(子宮内膜炎)のどちらかから排泄されているかの断定はしていませんが、エコーで全ての子宮内膜炎を診断することはできないと判断し、日々排濃している個体も含め網羅的に子宮内膜炎と定義しました。

以上の結果から薬液注入をすれば初回受胎率が上昇してハッピーとなったのですが、、

実は牛群全体をみていると妊娠率は18%程度で推移。分娩間隔400日を切ることはできていないのです。

フレッシュチェック時に黄体がある牛の割合は39%(71/181)、つまり半分以上の牛は正常な卵巣回復が起こっていない状況でした。一生懸命、子宮内膜炎の牛を見つけて治療を行い、ある程度の効果はあるものの、人間が疲れてしまいます。

そこで、注射する手間はかかるものの卵巣機能の回復と子宮内膜炎の治療のダブル効果を狙ってダブルオブシンク法を導入しました。

ダブルオブシンク法は授精まで27日かかるので本プログラムの開始は分娩後40日としました。

さぁ、このプログラムの受胎率は何%になるでしょう?今までの平均初回受胎率は29%です。

ダブルオブシンク法を導入した結果

結果です。右から二本目のdovと書いてあるのがダブルオブシンク法の受胎率です。

ダブルオブシンク法の結果は受胎率39%。

ちなみに一番左のnaturalと書いてある棒が自然発情の受胎率(39%)です。

今まではフレッシュチェック時に黄体があって子宮内膜炎がない健康な牛でも初回受胎率は30%程度でした。

それがダブルオブシンク法を実施したら子宮内膜炎・子宮蓄膿症・卵巣回復遅延の牛たち全てを含めて初回受胎率が39%です。

正直、今まで一生懸命フレッシュチェックをして薬液注入をしていた努力は何だったのかと、この結果には驚きました。

もちろん注射する手間はかかりますが、分娩後70日で牛群の4割の牛が受胎していきます。自然発情の受胎率も39%あるので、みるみる牛が受胎していくのです。

今まで頑張っても届かなかった妊娠率20%にダブルオブシンク法を導入したら、易々と超えたのです。

これによって、分娩する牛は増え、バルクが溢れそうになる程に、過去最高の出荷乳量を記録したのでした。

”過去最高の出荷乳量”これが繁殖検診をしていて一番嬉しいお言葉です。売り上げは全てを癒やす。

初回受胎率40%(分娩後70日前後で)!これが何よりも大切な数値!牛群を良くする近道です。

終わりに

今回は、薬液注入を主体にフレッシュチェックを行っていた農場にダブルオブシンク法を導入したら、どうなるのか?上手くいった事例をご紹介しました。

ダブルオブシンク法!うまくはまれば、とてつもないツールになることは間違いないでしょう。

日々淡々と注射を行い、定時授精することによって、初回授精受胎率が10%以上も上昇しました。

しかも、今まで一生懸命やってきたフレッシュチェック無しで(笑)

本農場では分娩後40日で半分以上の牛が卵巣機能の回復遅延が起こっている状況でした。この状況は当然、子宮の回復遅延もおこっています。本来であればこの卵巣機能の回復を早めるために乾乳管理・後産停滞予防・周産期疾患予防・乳房炎予防が先かもしれません。

ですが、ホルモン剤の力に頼って繁殖改善をした後に乾乳管理や周産期疾患予防に取り組んでも良いかもしれません。順番は逆でも良いと思っています。

是非ともフレッシュチェック=た!い!へ!ん!と思っている方お試しあれ!

初回授精受胎率40%です!!!(平均初回授精日数70日程度)どんな形であれ、この数値をクリアできていれば繁殖管理は格段に楽になります。

参考になれば幸いです。

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