あなの牧場の胚死滅・流産率は何%?

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せっかく妊娠したのに、胎子が死亡している…とても残念な経験はないでしょうか?

搾乳牛の一般的な胚死滅・流産率は8%程度と報告されてます。

しかし、胚死滅の発生率は農場によって大きく変動します。あなたの牧場の胚死滅率は何%でしょうか?

わたくしの経験では発生率は5%から高い農場では25%程度におよんでいますが、平均は8%前後です。

もし、農場の胚死滅・流産率が10%を超えている様でしたら、その要因を考えてみましょう。

授精後65日で再妊娠鑑定を実施したが、胎子の発育が途中で止まり、せっかく受胎したのにガッカリ。

この胚死滅や流産をどのように対策していけばいいでしょうか?

胚死滅・流産が起こる原因

ときどき、牛舎で流産胎子を発見する経験があるかと思います。その流産胎子を検査しても、ほとんどのケースは何も検出されませんが、まれに感染症が原因となっていることがあります。

流産率が高いなぁ~、と感じている方、まずは感染症のチェックだけ済ませて起きましょう。

比較的、起こりやすい感染症は

ネオスポラ(犬が媒介します)→胎盤や流産胎子で検査可能

BVD(PI牛がウイルスをまき散らす)→搾乳牛群はバルク乳で検査可能

異常産ウイルス→(蚊が媒介する)→流産胎子で検査可能

サルモネラ感染症→(サルモネラ菌)→搾乳牛の便で検査可能

感染症が原因で流産を起こしている場合は非常にもったいないです。対策すれば防げますので、まずは検査することをお勧めします。

なかなか検査となると躊躇してしまいますが、思い切ってやっちゃいましょう!

ネオスポラ感染症

通常3~8ヶ月令の流産、死産が見られます。季節性がなく散発的な流産が起こる、(野)犬が牛舎を出入りして分娩後の胎盤を食べている、など思い当たる点があれば検査してみましょう。

犬の侵入を防止して、ネオスポラ抗体陽性牛を淘汰すれば対策完了です。

BVD感染症

BVDは基本的にP1牛が問題となります。妊娠しているお母さんがBVDウイルスに感染すると、胎盤を介して胎子もこのウイルスに感染します。一般的にお母さんは無症状で、この感染した胎子を流産せず正常に分娩したら、BVDウイルスを体内に持った子牛が生まれてきます(これをP1牛と呼ぶ)。

P1牛は基本的に若齢時に下痢や肺炎などで死亡しますが、まれに妊娠分娩し搾乳牛群に混ざることもあります。そして、このP1牛は搾乳牛群にBVDウイルスをまき散らします。

搾乳牛群にP1牛がいても沢山流産が起こる感じはしませんが、胚死滅も起こすのでこのP1牛の損害は未知数です。

このP1牛は比較的体格が小さく、P1牛から生まれてくる子牛は必ずP1牛になります。わたくしの経験ではP1牛で4産した牛がいました。この牛から生まれてきた子牛を調査してみたら、流産するか、生まれてきてもすぐに死んでいました。ですので、P1牛はなるべく早く摘発淘汰を推奨します。

まずは、バルク乳でBVD検査をしてみましょう。バルク乳で陽性が出た場合はその後全頭検査を実施して、P1牛を摘発します。そして、P1牛を淘汰してから牛の妊娠期間280日間は新たなP1牛が生まれてくる可能性があるので、この期間に生まれてきた子牛を検査します。

これで、BVDの対策は完了です。

異常産ウイルス

代表的な流産を起こす感染症はアカバネ・アイノ・チュウザン・ピートンの四種類です。流産・早産・死産がおこります。ごくまれに体型異常の子牛が集中して生まれてくることもあります。

蚊やヌカカを駆除することは困難なので、母牛にワクチンを打って予防します。蚊が発生する前にワクチン接種を済ませて起きましょう。夏に感染するので冬から春先に流産や体型異常の子牛が生まれてくる場合は異常産ウイルスを疑っていいかもしれません。

体型異常の子牛は骨盤を通過できないことをあるので、そうなった場合は帝王切開になります。関節が曲がらないとなると、本当に分娩時苦労します。きっと、先人の方は異常産に悪戦苦闘され、ワクチンが開発されたとお察しします。

ワクチンで防げる感染症は対策しておきましょう!

サルモネラ感染症

近年、全国各地でサルモネラ感染症が多発しているように感じます。サルモネラ感染症は高熱+下痢+流産を引き起こします。下痢が発生し数日後に流産が散発するとこの病気が疑われます。

サルモネラによる流産は比較的短期間に集中し散発的に起こることはまれです。

数頭検査を依頼して陽性反応が出てしまったら、全頭検査に移ります。陽性牛と陰性牛に分け陽性牛を隔離することがきればベストですが、できないケースがほとんどだと思います。牛群全体に広がる前に早期発見することが大切です。

基本的な対策は牛舎を徹底的に掃除して、口から入るものをチェックします。生菌剤を投与して、牛群の陽性率やサルモネラ菌の種類によって抗生物質を投与するか・しないかを考えます。

終息まで早いケースで1ヶ月、長いケースで1年近くかかる事例もあります。サルモネラ感染症は早期発見早期対策です!

近年のサルモネラは侵入をなかなか防ぐことは大変です。ほとんどのケースは侵入経路が不明です。とっても綺麗にしているあの牛舎でサルモネラ!といったケースも珍しくありません。なるべく出ないに超したことは無いですが、出た際の対処法をしっかり考えておくことも大事かと思います。

感染症が原因ではない流産・胚死滅

多くのケースは原因不明の流産・胚死滅です。そんななかでも流産・胚死滅率が高い牧場はなるべく少なくすることが出生子牛の数を増やすことにつながります。

実際の流産率をみていきましょう。

各農場の流産率と胚死滅率

この図は規模的に40~80頭でTはタイストール、Bはバーンの計5農場の胚死滅・流産率を示した図です。妊娠鑑定は30日前後で実施しその時点で胚死滅している個体も含まれます。

T農場1(タイストール農場1)のように胚死滅・流産率が1%台の農場から、T農場4のように25%に及ぶケースもあります。

別の100~200頭のタイストールとフリーストールのケースでは

こちらはTSがタイストール、FSがフリーストールを示してます。

7%から16%の範囲でフリーストールの方が若干高い傾向がみてとてます。

早期妊娠鑑定を実施すると後期胚死滅率をある程度把握できます。早期妊娠鑑定を実施していない場合は胚死滅流産率はもう少し低い値となります。後期胚死滅を把握することでその農場の特徴が見えてくることがあります。

タイストールで8%、フリーストールで10%を超えているようでした、その原因を考えてみましょう。

原因分析+対策:流産・胚死滅率25%の牧場

流産が発生している時期はいつか?チャックしてみましょう。

分娩後日数

季節性

胚死滅・流産の日齢

産次数

繰り返し胚死滅・流産している牛がいるか

精液・受精卵のロット

流産・胚死滅率が高い農場で上記の項目をチェックすると、ある程度の傾向がみられます。

色々な要因を調査した結果が上の図です。

分娩後120日~160日に30~56日齢の後期胚死滅流産が冬場に多く発生するといった特徴があることがわかりました。

これを考察すると

分娩後120~160日は乳量が低下する時期に相当し配合飼料の給与量を減らす傾向にあります。

胎齢日数は30日~56日は妊娠が安定する時期で栄養的要因が関係する。

冬は寒いので、乳牛といってもエネルギーを消費する。

以上の結果から、栄養学的な問題が考えられました。

飼料給与の見直しと早付けを提案したところ、年間の胚死滅・流産率は9.5%まで低下しました。

まとめ

流産・胚死滅は非常に多くの要因が絡むため原因の究明が困難となります。

しかし、そんな中でも流産・胚死滅が10%を超えている状態は減らす努力をしていく必要があります。

まずは、感染症のチェックから!感染症が原因の場合は対策の施しようがありますで、判明したときは大変ですがこれで流産・胚死滅が減ると頭を切り替えていきましょう。

一般的に流産・胚死滅は多くのケースでは原因不明です。

そんな中でも胚死滅・流産率が高い牧場は何かしらの傾向があるはずです。その原因をしらみつぶし的に当たってみましょう。

普段エコーで妊娠鑑定している際に思うことは、コンディションが低く痩せている牛・足が痛い牛は感覚的に胚死滅率が高いです。繰り返し胚死滅する牛もいます。そういった牛を特定できていれば、授精後にブリードを挿入する・流産予防の持続性黄体ホルモン剤を投与する対応も取れます。

牧場の妊娠率20%以上や分娩間隔400日を達成するのに加えて流産・胚死滅を減らす対策も平行して大切です。

少しでも農場の流産・胚死滅率が下がれば幸いです。

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