
「最近、紙での繁殖管理が大変になってきたわ…。でも、有料の牛群管理ソフトを使うほどでもないし、何か良い方法はないかしら?」

「スマホを使って、牧場関係者と共有できる便利な繁殖管理ツールがあります。
Googleが提供するスプレッドシートを活用すれば、獣医さんや授精師さんと簡単に牧場データを共有できます。
関係者が協力することで、牧場の繁殖成績は飛躍的に向上しますよ!」
分娩間隔400日を切るためのツール(スプレッドシート)の使い方
牧場の皆さん、スタッフの皆さん、そして獣医師の方々、ぜひこのツールを活用し、牧場データを共有して分娩間隔400日切りを達成しましょう!
スプレッドシートの導入について
下記に、分娩間隔400日を切るためのツール(スプレッドシート)を添付しています。
最初の設定はスマホでは操作が大変なので、パソコンでの設定をおすすめします。
スマホで利用する場合は、アプリストアで 「スプレッドシート」 と検索し、アプリをダウンロードしてください。Google スプレッドシート→インストールです。
スマホでの入力は画面が小さく、少し慣れが必要ですが、閲覧だけでも十分に活用できます。

このツールの対象者
このスプレッドシートは、
- 規模は100頭以下で有料の牛群管理ソフトを導入することに抵抗がある方
- そこまで本格的なシステムは必要ない方
- 検定を受けれない和牛を飼養している方
に向けた簡易的な管理ツールです。
牛群検定WebシステムDLの活用もおすすめ!
北海道で検定を受けている方は、「牛群検定WebシステムDL」の活用もおすすめです。
こちらのリンクを貼っておきますので、ぜひチェックしてみてください。
https://nyuken.hmrt.or.jp/dl/
それではスプレッドシートの使い方を進めていきましょう。
Step1:スプレッドシートを開き、関係者と情報を共有する
下記の画面が表示されます。
まずは左上のファイルを選択してコピーを作成してから使用します。
コピーしたシート名を牧場の名前に変更してください。

次は右上にある共有ボタンを押して、関係者のメールアドレスを入力してこのシートを共有します。

青枠に関係者のメールアドレスを入力して招待します。
招待された側はメールが届くのでそのメールに添付されているURLをクリックすれば共有完了です。
Step2: 牛群データを完成させる

デモ版はサンプル数値が入っていますので、その農場に合わせて作り変えてください。
灰色で塗りつぶし箇所は数式が入っていますので、それ以外のセルを完成させます。
- 状態0=フレッシュ(VWP前)
- 状態1=VWPを超えた授精対象牛もしくは空胎確認牛
- 状態2=授精済み牛(鑑定前)
- 状態4=早期妊娠鑑定+
- 状態5=妊娠確定+
- 状態6=繁殖中止牛
- 状態7=13ヶ月令以下の未経産
- 状態8=廃用・死亡・譲渡
状態は好きなようにカスタマイズしてください。
分娩後のデータ更新と手入力の重要性
分娩後のデータ処理
分娩したら、以下の更新を行いましょう:
✅ 分娩月日 を最新のものに更新する
✅ 産次 を+1する
✅ 状態 を「0」にリセットする
✅ 初回授精日、授精回数、授精月日、種雄牛のデータを削除
授精データの手入力のメリット
初回授精日、授精回数、授精月日、種雄牛(精液)は 日々手入力 が必要です。
「手入力は面倒だ」と感じる方もいるかもしれませんが、実はこれが 農場の課題を発見するカギ になります。
私自身も農場の授精データを手入力することで、農場の問題点や自身の課題が見えてきました。
リアルなデータを毎日目で確認することで、繁殖成績向上のヒント を得ることができます。
「楽をして農場を良くすることはできません!」
少しの努力が、確実な改善につながります。
とはいえ、日々の入力は 牧場の方がリアルタイムで行うのが理想 です。
分娩予定日の横に 検診日ごとの列 を追加し、その結果を入力していくことで、発情ステージの推測に繋げ、より正確な管理が可能になります。
日々のデータ入力を通じて、より良い農場管理を目指しましょう!

牛群データの活用と繁殖管理のポイント
牛群データが整いました! ここからが本番です。データを活かして繁殖成績を向上 させましょう。
① 状態「1」の牛(授精待ち)
🚀 早めの授精を徹底!
- 次回発情予定日が推定できている牛は しっかり観察 し、タイミングを逃さない。
- 発情が不明な牛は ホルモン剤を活用 するのも一つの手。獣医師の検診を受けて適切な処置を!
② 状態「2」の牛(妊娠鑑定待ち)
🔍 回帰発情の確認 & 早期妊娠鑑定!
- 回帰発情(再び発情すること)をしっかり確認してください
- 発情が確認できなかった牛は、42日目までに妊娠鑑定を実施してください
- 妊娠が確認されたら…
- 陽性(妊娠判定)なら「状態4」に変更!
- 確定したら「状態5」に変更!
- 空胎(妊娠していなかった)なら「状態1」に戻し、早めに授精を。
- 一度授精しているので、卵巣は動いているはずです。早期対応が大切です。
③ 状態「4」と「5」の牛(妊娠確定)を増やす!
📈 最終ゴール:分娩間隔を短縮!
- 状態「4」と「5」の牛を増やしていくことで、繁殖サイクルを安定させる!
- 受胎率UP → 分娩間隔短縮 → 乳量増加 & 収益改善!
結論:データを使って繁殖のサイクルを回そう!
状態「1」は 早く授精する
状態「2」は 回帰発情を見つける or 妊娠鑑定を行う
状態「4」と「5」の牛を どんどん増やしていく
💡 データを活用し、確実な管理で繁殖成績を向上させましょう!
牛群データ入力方法
牛群データ入力方法について
マスタ登録画面のカスタマイズについて
こちらに マスタ登録画面 があります。
農場ごとに適したマスタ設定を自由にカスタマイズしてご活用ください!
登録できるマスタ一覧
📌 個体マスタ
📌 精液マスタ
📌 授精回数マスタ
📌 産次数マスタ
📌 授精師マスタ
📌 授精方法マスタ
📌 受胎促進マスタ
📌 妊娠鑑定マスタ
📌 胚死滅マスタ
農場に合わせたカスタマイズが重要!
特に、精液・授精方法・受胎促進の設定 は農場によって異なります。
ここで登録した内容が、牛群データの「種雄牛プルダウン」や「授精データ入力画面」 に反映されます。
より 農場の実情に合ったデータ管理 を実現するために、ぜひ積極的にカスタマイズしてください!
Step3:受胎率の分析
発情発見の基盤が整えば、分娩間隔400日切りは十分可能!
発情を適切に発見し、牛群データを共有できる環境が整えば、それだけで分娩間隔400日を切ることは十分可能です。
しかし、安定的な受胎率が確保されていない場合は、受胎率の詳細な分析が必要 になります。
受胎率の分析は少々厄介…
受胎率は、単に「どの牛が妊娠したか」だけでなく、授精に関連するさまざまな要因 を考慮する必要があります。
例えば、
- PG誘起発情による授精(ホルモン処置による発情、獣医師による違い)
- 5産目の経産牛(産次による影響)
- 3回目の授精(授精回数の影響)
- B授精師が実施(授精師による違い)
- 受胎促進処置を追加(ホルモン剤補填の影響)
このように、授精にはさまざまな要因が絡み合っています。
それぞれの要因を分析し、農場の平均受胎率を低下させている原因を突き止めることが重要です。
授精データの入力方法について

正確なデータ入力が受胎率改善のカギ!
緑で囲んだ 「授精月日」と「妊娠結果」 は、必ず入力してください。
これらのデータが正しく入力されることで、受胎率の正確な分析が可能になります。
授精に関連する情報も入力を!
授精に関する以下の情報を入力すると、各項目ごとの受胎率が自動計算されます。
✅ 産次数(経産牛or未経産牛の影響)
✅ 精液名(種雄牛ごとの受胎率分析)
✅ 授精回数(1回目・2回目・3回目…の影響)
✅ 授精師(誰が授精を行ったか)
✅ 授精方法(自然発情・ホルモン誘起など)
✅ 受胎促進処置(ホルモンや栄養補助の有無)
早期妊娠鑑定の結果の入力について
早期妊娠鑑定の結果は入力してもしなくてもOKですが、以下のように記録するとより詳細な分析が可能です。
- 早期妊娠鑑定で「◯」or「怪しい」 → 妊娠結果が「×」 → 胚死滅(初期の妊娠喪失)
- 妊娠結果で「◯」の後に流産した場合 → 流産を選択
正確なデータ入力が、受胎率向上と分娩間隔400日切りの実現 に繋がります!
授精方法時のポイント
18〜24日前に授精が発生している授精は自然発情(回帰)で入力
この回帰発情発見率を上げることが重要です
骨の折れる作業ですが、成果を生む鍵!
この作業、本当に大変です。
ですが、農場で 安定した受胎性 を確保するためには、
「やったことの結果を評価し、次の行動に活かす」 ことが欠かせません。
入力は大変…でも、やる価値がある!
授精データの入力は手間がかかります。
しかし、データが揃えば「どこに課題があるのか」が見えてきます。
✅ 授精タイミングに問題があるのか?
✅ 特定の精液で受胎率が低いのか?
✅ 授精方法や授精師ごとの違いは?
これらを分析し、改善につなげることで、農場全体の繁殖成績が向上します。
ゴールは「授精データを入力をしなくても回る繁殖管理」
最終的には、「授精データを入力しなくても農場の繁殖がうまく回る」 仕組みを作ることが目標です。
それまでは、しっかりデータを分析し、改善を続けましょう!
Step4:受胎率の解析
いよいよ、苦労して入力した授精データの解析に移ります。
経産牛の受胎率
経産牛の受胎率を分析しましょう
経産牛の受胎率を開いてください。
農場ごとに経産牛の特徴が異なり、それに伴い受胎率にも差が出ることが多いです。シートの一番上に、緑色で平均受胎率 を表示しています。

また、受胎率40%以下のデータは赤色で強調 しています。ここに問題の要因が隠れている可能性が高いので、農場の受胎率を下げている要因を突き止めましょう。
受胎率の改善は簡単ではありませんが、受胎率が低いままだといくら努力しても結果がついてきません。最低でも30%以上 を目標にしたいところです。
受胎率の詳細分析
牛群データ入力法で設定したマスタ項目ごとに受胎率をチェックし、問題点を特定しましょう。
✅ 精液別受胎率
✅ 授精回数別受胎率
✅ 授精方法別受胎率
✅ 受胎促進別受胎率
✅ 産次別受胎率
✅ 授精師別受胎率
これらの中で、平均受胎率を下回っている項目はありませんか?
問題の原因を見極め、農場に合った改善策を検討しましょう。
未経産牛の受胎率
未経産牛の受胎率を確認しましょう
未経産牛についても、経産牛と同様に受胎率を確認していきます。
未経産牛はまだ分娩を経験していないため、搾乳牛ほどの細かな管理は必要ありません。負のエネルギーバランス(NEB)の影響もないため、経産牛に比べて受胎管理が比較的容易です。
しかし、13ヶ月齢までに発情が順調に来るような適切な飼養管理 が不可欠です。発育不良や栄養管理の不備があると、発情の遅れや受胎率の低下につながるため、育成段階からしっかりとした管理を行いましょう。

未経産牛の受胎率は 50%以上 を目指しましょう!
Step5:月別受胎率と流産
月別受胎率と流産を確認しましょう
流産や胚死滅 が多い場合は、流産を引き起こす感染症の可能性を疑い、徹底的にチェックしましょう。特に ネオスポラ症、BVD(牛ウイルス性下痢症) などの感染症は、流産の原因となるため注意が必要です。
目安となる数値
一般的に、胚死滅・流産率は 8%前後 が平均とされています。この数値を基準にし、自農場の状況を評価してください。

妊娠頭数の安定確保が鍵
毎月、安定して一定数の牛を妊娠させることは、持続可能な繁殖基盤を築くために重要 です。
もし、一時期に受胎が集中すると、乾乳施設が過密になり、分娩後の事故が多発するリスクが高まります。結果として、繁殖成績の悪化にもつながるため、年間を通じた計画的な受胎管理を心掛けましょう。
月別の受胎率と妊娠頭数を確認し、最適な繁殖サイクルを構築しましょう!
Step6:分娩間隔400日切り 目標値
やることは至って単純です。
状態1を減らし状態2を増やす!そうすればきっと状態5が増えます。

分娩間隔400日を切るためのステップは下記の記事を参考に。
あなたの牧場 繁殖成績 改善します!
4ヶ月毎に記録を取っていき、目標値を目指し分娩間隔400日切りを達成しましょう!
まとめ
少々長くなりましたが、スプレッドシートの活用方法を解説しました。計算式が抜けている箇所もあるので調整してみてください(未経産の空胎日数など、)
今回のシートはシンプルな作りになっているので、得意な方はぜひ自由にカスタマイズしてみてください!より使いやすいものができたら、ぜひ教えてくださいね(笑)。
管理できる頭数の目安は 最大100頭程度 ですが、それ以上の規模になれば、農場に合った牛群管理ソフトの導入を検討するといいと思います。
一番のポイントは、関係者全員でデータを共有すること。 情報を共有し、連携することで、農場全体の管理精度が格段に向上します。
「すべての酪農・畜産農家さんが分娩間隔400日を切れる!」 そう信じていますし、実現できると確信しています。
このスプレッドシートが、皆さんの農場改善の一助となれば嬉しいです。ぜひ活用してみてください!



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