牛の発情周期は21日間!これは多くの方がご存じかと思います。
この21日間に、牛の体中ではどのようにホルモンが動いているのか!!!これを詳しくご存じの方は、そう多くは無いかもしれません。
ホルモンの体内動態を理解することは、繁殖を極める!為には重要です。
今回、一番言いたいことはエストロジェン(Estradiol)というホルモンについて!
エストロジェンは発情行動を誘発します!
皆様の牛群では十分なエストロジェンが出ていますでしょうか。
それではみていきましょう。

牛の発情周期
- 発情前期 : 発情期の始まり(図の19~20日目に相当)で、排卵前の段階です。子宮内膜が厚くなり、排卵に向けての準備が行われます。牛はこの期間中に不規則な行動をとり発情を示すことがあります。2ndWave と書かれた卵胞が成長するとともにEstradiol(エストラジオール)と書かれている線が次第に上昇しています。このエストラジオール(発情ホルモン)が最高潮に達した時に牛は発情行動を起こします。この発情ホルモンを正常に分泌させることができるか!!ここが繁殖管理をする上でとてもとても大事になります。しっかり発情ホルモンが出ている牛は、高い受胎率を叩きだします。後述します。
- 発情期 : 牛が発情行動を見せる期間で、排卵が起こる前の時期です(図の20~21日目に相当)。牛は他の牛に対して発情行動を示し、立ったまま他の牛に乗ることや、他の牛を今後のことなどが見られます。この期間は約12〜18時間続きます。先ほどのEstradiolがしっかり分泌されていることが必須条件です。このEstradiolが十分でていない場合は発情行動を起こしません。
- 排卵期(Ovulation) : 発情終了後、排卵が起こる段階です(1日目に相当)。排卵は発情期その後数時間から1日程度はあります。この時期に受精が起こると、妊娠が始まります。
- 黄体期: 発情期が終わると、卵細胞から排卵された周囲に黄体が形成されます。この黄体が分泌するProgesterone(プロゲステロン)は、子宮内膜を整えて妊娠をサポートする役割を果たします。黄体期は妊娠が成立しない場合に約16〜18日間続き、その後黄体は退行し発情が誘起されます。
なぜ発情が来るの?もう少し詳しい話(興味ある人限定)
- 妊娠していない場合(胚が存在しない) オキシトシンというホルモンが子宮内膜のオキシトシンレセプターと結合することによって、子宮内膜からPGF2αが分泌されます(図参照)。PGF2αは俗に言うPG(繁殖治療で用いられる)です。このPGが黄体に作用することによって、黄体が退行し次の発情が来ます。
- 妊娠している場合(胚が存在する) 子宮内に胚が存在する場合は、胚からインターフェロンタウというタンパク質が分泌されます。このインターフェロンタウは子宮内膜のオキシトシンレセプターの発現を抑制します。このオキシトシンレセプターの数が少なくなると子宮内膜からのPGF2α生成は抑制されるため、黄体が退行せずに妊娠が維持継続されます。
発情ホルモン エストロジェンの作用
- 発情の促進: エストロジェンは牛の発情を促進する重要な要素です。発情期にエストロジェンの濃度が上昇することで、他の牛に対して発情行動を見せたり、活動量が増加するなど、繁殖活動に関連する行動が増加します。
- 卵細胞の成熟: エストロジェンは卵細胞の成熟を促進します。排卵の前にエストロゲンの濃度が上昇することで、卵細胞が成熟し、排卵が行われる準備が整います。
- 子宮内膜の成長: エストロジェンは子宮内膜の成長をサポートします。 子宮内膜が成長することで、受精卵が着床しやすい状態が作られます。
- 子宮の移動を促進する: エストロジェンは子宮内で受精卵の移動を促進する役割があります。これにより着床の成功率が高まります。
- 発情のタイミングの予測: エストロジェンの濃度変化を観察することで、発情のタイミングを予測することができます。これは人工授精などの繁殖管理において重要です。
このようにエストロジェンは発情行動を起こすだけではなく、妊娠成立にとても重量な役割をもっています。
エストロジェン濃度が高いと有利
良い発情を起こさせる管理が何よりも大事。
良い発情とは=エストロジェンがしっかり分泌していること。
つまり、授精師さんが納得してAIしてくれるような発情です!
これは、わたくしの失敗談です。
エコーで目に見えない微弱な発情をみつけること(発情行動を示さない発情)
排卵後の牛を見つけること(発情行動を示していないがETすることはできる)
黄体の大きさから推定排卵日を特定すること(同上)
発情兆候を示さない、もしくは発情が弱い牛群で、これらの事を良かれと思って行っていました。
微弱発情や排卵日の推定には多少の自信はあり、AIやETをお願いしていましたが、、
蓋を開けてみたら受胎率の低いこと低いこと(泣)
大事な事は十分なエストロジェンが分泌された発情にAIもしくはETすることだったんです。
エストロジェンがもたらすメリットを過去の文献から箇条書きにします。
- 発情発現した牛と発情行動を示さなかった牛を比べると、発情発現した牛は排卵後のプロジェステロン濃度の上昇が速やかに起こる
- オブシンク法にて痩せている牛に2回目のGnRH投与前にE2(エストロジェン)を投与すると受胎率が向上する
- オブシンク法において排卵誘起時点でエストロジェン濃度が高い方が受胎率は高い
- レシピエント(移植される牛)の授精卵移植において排卵前にエストロジェン濃度が高い方が移植受胎率が高い
- オブシンクでの2回目のGnRH投与時のエストロジェン濃度と排卵後のプロジェステロン濃度の関係性は、排卵時のエストロジェン濃度が高いと排卵後のプロジェステロン濃度も高い。
- 発情行動を示した場合、黄体退行関連因子の発現が弱い(エストロジェンが十分分泌された場合は黄体が退行しにくい)
このように発情行動を示した牛と発情行動を示さない(エストロジェン濃度が低い)牛を比較した試験では、発情行動を示した牛の方が明らかに受胎率が高いことが報告されています。
まとめ
牛の発情周期に加え、発情ホルモン=エストロジェンについて長々とお話ししました。
わたくし自身、微弱発情の牛に手を替え品を替え、受胎させるために試行錯誤している日々ですが、これは根本的な解決にはなっていないのです。
明瞭な発情発現を起こさせるような管理技術が繁殖管理の真髄です
良い発情=排卵前に高エストロジェン
良い発情=排卵後の速やかなプロジェステロン濃度の上昇
良い発情=排卵前周期の高いプロジェステロン濃度
目の前にいる牛は、なぜ、発情行動を示さないのでしょうか?
どうやったらエストロジェンを十分に分泌し、良い発情行動を示してくれるのでしょうか。
難しい問題だと思いますが、これができている牛群があることも確かな事実です。
この問題に目を背けず、できることから一歩ずつ取りくんでいきましょう。



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