牛に使うホルモン剤 5選

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繁殖治療に用いるホルモン剤は多岐にわたりますが、大まかな効能を知っておくと繁殖治療に対する知識が深まり、より繁殖改善につながるでしょう。

一つのホルモン剤でも使い方によって効果が違うので理解するのは大変だと思いますが、知識は武器になります!

それでは、代表的なホルモン剤をランキング形式でいってみましょう。

No.1 プロスタグランジンF2α(PG)

主に子宮内膜で産生され、黄体退行作用・子宮収縮作用を示します。

1.PGを投与すると2-5日後に発情がくる

2.子宮蓄膿症の治療

3.胎盤停滞の治療

4.流産させる

5.分娩誘起する

  • 子宮に問題ない、妊娠していない、黄体がある条件の牛にPGを投与すると黄体退行作用によって一般的に2-5日後に発情がきます。
  • 子宮蓄膿症は子宮に膿が貯留した状態です。発情は示さず、子宮は下垂し、黄体が残存しているケースが大半です。黄体退行作用・子宮収縮作用によって子宮内に貯留した膿を排泄させる効果があります。
  • 分娩後に胎盤停滞を発症した牛に投与すると子宮の収縮作用によって胎盤が剥がれやすくなります。ただし、牛の状態にも作用されるため効果は限定的かもしれません。
  • 妊娠している牛は黄体があるため投与すると流産する可能性があります。正常に妊娠している牛に間違ってPGを投与すると流産しますので気をつけましょう。双子や三つ子が妊娠、ミイラ胎児、胎子が死亡していることが分かった時に投与して流産させることもできます。
  • 牛の妊娠期間は280日ですが、分娩遅延が起こると胎子が大きくなりすぎるため分娩誘起剤として使用します。PG単独投与すると一般的に24~72時間後に分娩します。デキサメタゾンやオバホルモンと併用して注射すると胎盤停滞予防効果+24~36時間程度に分娩を集中させることができます(朝投与すると翌日の朝~夕方に生まれる)。

No.2 性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)

商品名でいうとコンセラール・コンサルタン・ブセレリン・酢酸フェリチレリンなどがこれにあたります。

このホルモン剤は脳の視床下部から分泌されるホルモンです。

卵胞を成長させる(FSH作用)

卵胞を排卵させる(LH作用)

  • 分娩して40日以上・育成牛は生後13ヶ月以上を超えても発情がみられず、卵巣の形状は正常であるが、卵胞の十分な発育、排卵および黄体が形成されないものに有効です。
  • 主席卵胞がある状態で投与すると2~4時間後にLH作用サージが起こり、その24時間後に排卵します。排卵をコントロールできるので定時授精の最後の注射に用いられることが多いです。
  • 卵胞嚢腫の治療 卵胞嚢腫と共存する直径2.0cm以下の卵胞が発育過程にある時期に注射すると排卵が誘起され、黄体形成が起こり、卵胞嚢腫が治ります。卵胞嚢腫自体が排卵するのではなく、共存卵胞を排卵させます。

No.3 プロゲステロン膣挿入剤 

商品名でいうとシダー1900、イージーブリード、プリッドがこれにあたります。

別名トンボとも呼ばれ、竹とんぼの様な形をしており膣内に留置させます。このトンボの中にはプロジェステロンと呼ばれるホルモン剤が染みこませてあり、これが徐々に牛の体内に吸収されていく仕様になっています。

シダーの留置は慣れれば酪農家さん自身で行うことができます。

プロジェステロンは牛の黄体から分泌されるホルモンなので、黄体を強制的に入れることになります。

その効果は

卵胞を成長させ抜去時に発情がくる

黄体ホルモンレベルを上げ受胎促進に用いる

  • 卵巣静止の治療 上記のGnRH製剤を投与しても卵巣が動かないときはプロゲステロン膣挿入剤を入れると体内は黄体下にさらされるため、卵胞ウェーブが起こり抜去時に発情行動がみられます。発情周期の同調には12~15日間、卵巣静止には12日間、鈍性発情には7日間留置すると書かれています。
  • 卵胞嚢腫の治療 一般的に卵胞嚢腫の治療は上記のGnRH製剤が第一選択として用いられます。それでも治らない場合はプロゲステロン膣挿入剤を用いると比較的治ります。さらに抜去時に発情がきて受胎するケースも多くあります。
  • 発情の同期化 黄体ホルモンを直接体内に入れることができるので、発情の同期化に用いられます。受精卵移植のレシピエント・プログラム授精など。
  • 受胎促進 授精後5日目にプロゲステロン膣挿入剤を挿入すると血中の黄体ホルモン濃度が一気に上昇します。受胎する牛は授精後5日前後の黄体ホルモン濃度が高いという結果がでています。
  • 発情の抑制 イレギュラーな使い方ですが、妊娠牛に誤ってPGを投与してしまった!強い発情がきて他の牛が乗られて足を痛める!このような問題に、時折イージーブリードが使われます。

No.4 エストラジオール製剤

商品名でいうとオバホルモンです。

エストラジオールはエストロジェンという卵胞から産生される発情ホルモンそのものです。

このホルモンを投与すると発情行動を示します。

発情行動を示す(鈍性発情)

子宮頸管拡張

子宮の発育不全

  • 膣および卵管、子宮の発育と成長を促します
  • 子宮の頸管拡張 長期在胎牛に分娩誘発をするときにエストラジオールも合わせて投与すると後産停滞が減るという報告があります。
  • 黄体が退行している状況下でエストロジェン濃度が上昇したら27時間後に排卵が起こります。この流れを利用してプログラム授精の排卵誘起剤として用いられます。また、黄体がある状況下で投与すると主席卵胞は退行して、数日後に新たな卵胞ウェーブが発生します。
  • 発情行動が弱い時に投与します。ただし、発情は示すものの子宮・卵胞は反応しないケースもあるので、状況に合わせて使用してください。
  • 作用はGnRH製剤と似ていますがオバホルモンの方が安価です。

No.5 HCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)

黄体形成ホルモン様の作用を持ちます。

卵胞を成長させる(FSH作用)

卵胞を排卵させる(LH作用)

授精後5日目に投与して副黄体を作る

HCGもGnRH製剤と同様の作用をもっています。

GnRH製剤は主に発情誘発や排卵の誘導に使われます。発情が観察できない場合や排卵をコントロールするために使用されることが多いです。

一方、HCG製剤は、黄体の形成と維持を促すことで、プロジェステロン濃度を高め、受胎率を向上させる目的で使用されます。授精後の副黄体形成に役立ち、黄体機能の補強や1stウェーブ主席卵胞の排卵誘導などにも使われます。

また、受精卵移植の際には、黄体が存在する子宮角側に受精卵を移植するのが一般的です。これは、黄体がプロジェステロンを分泌し、これが子宮内膜の成熟と妊娠維持に必要であるためです。しかし、黄体が存在しない側に受精卵が着床してしまう場合もあります。そのようなケースでも、HCGを投与することで、反対側に主席卵胞がある場合は黄体の形成を促し、妊娠を維持させやすいことが考えられます。

まとめ

この5つのホルモン剤を知っているだけでも、繁殖管理に対する理解は格段に深まるでしょう。

獣医師が投与したホルモン剤からその牛の病態も想像できるようになります。

ホルモン剤を上手に利用して一歩進んだ繁殖管理を目指しましょう!

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