現代乳牛はアスリート!

その他の繁殖

乳牛って実はアスリートなんです!しかも超アスリート。

牛を健康に飼う為にはアスリートに適切な栄養と休息を取らせる必要があります。

牛が健康に生きて乳を出すために必要なことは何でしょうか?

「牛から餌を食べる時間を奪わないこと」

ケトーシス・乳熱・変位・蹄病・乳房炎などの治療をしているとき、この病気を根本的に無くす為に必要なこと、ってなんだろ?と、自問するときがあります。

本当に必要なことってなんだろう、根本的・多面的・長期的な視点を持って考える必要があります。

子牛の分しか乳生産を必要としない和牛ではほぼ起こらない病気ですし、「高泌乳」まで要求する必要が無ければこの病気はきっと無くなるのでしょう。

産後、このような状態になる牛はいますでしょうか?

後ろから観察すると左側の第一胃(ルーメン)がある場所が陥没しているのが見て取れます。

十分な餌が食べれていないのは明白です。毛艶は悪く目は陥没しています。

なぜ、アスリートがこのような状況になってしまうのでしょうか?

ルーメンが縮小した牛は第四胃変位になる可能性が高まります。変位になった牛はますます餌を食べれないので第4胃を写真の様に右側の腹壁に縫いつけ、ガスがたまらないように手術します。

アスリートである牛が健康に生きるために必要なことを考えてみましょう。

適切な栄養

牛には適切な栄養バランスが必要です。牛には、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が必要です。これらの栄養素を満たしてあげることで、体は成長し、免疫力を維持することができます。

現代の搾乳牛は1日30リットルの乳を生産できるように改良されています。この乳を生産するためにどれだけのエネルギーが必要だとおもいますか?

答えは、85,000キロカロリーです。

これを成人男性(1/10換算)に置き換えると8,500キロカロリー(一般的な男性の接種カロリーの4倍)です。これはハンバーガー33個に相当します。

激しい運動をしているサッカー選手でも接種カロリーは3,500キロ程度です。

このように、高泌乳牛は体内で大量のエネルギーを消費する「アスリート」と考えることができます。

そのため、十分な量の正しい餌を提供することは、牛の健康維持と生産性向上のために非常に重要です。また、食事の時間も確保し、環境を整えることも同様にパフォーマンスを維持するために必要です。

ロボット搾乳で1日70キロ乳を出す牛の話を聞いたことがあります。この牛は寝る間も惜しんで、餌場にいて、ずっと食べていたそうです。人間のように3度の食事では、必要なエネルギーをとても補えないのでしょう。1乳期の乳生産量はなんと20,000キロです。

つまり、牛の栄養管理は人間のアスリートの栄養管理よりも難しいと言えるかもしれません。

水は牛の健康に不可欠な要素の1つです。牛は1日に数十リットルの水を必要とします。十分な水を摂取することで、牛は体温を調節し、代謝を促進することができます。

ウォーターカップのレバーを押すと、チョロチョロしか水が出ない牛舎に遭遇します。

立地条件から綺麗な水を確保できない環境の牛舎にも遭遇します。

こんなこともありました。牛が餌を食べないとの診療依頼、元気がない、脱水している、病気ではなさそう、よく観察するとウォーターカップのレバーが摩耗して壊れている。バケツで水をあげたてみたら、頭を突っ込み一瞬で飲み干しました。この牛は、いつから水を飲んでいなかったのだろう。

冬場に水が凍って牛舎全体の水が出ない場面に遭遇したときは、牛舎全体の牛たちが異常なくらい鳴いていました。

十分な量と上質の水を供給することは、牛の健康管理の一部として非常に重要です。水供給システム自体を改良する大がかりなインフラ整備は大変ですが、現状を定期的にチェックし、問題が発生した場合はすぐに対応することが大切です。

運動

牛には適度な運動が必要です。運動不足になると、肥満や関節炎、循環器疾患などの健康問題が発生する可能性があります。

牛は草食動物です。最近は、牧草地で放牧されている牛を見る機会が減ったように感じます。日光にあたり、みんな同じ方向を向き、頭を下にして牧草を食べている姿。お腹がいっぱいになったら木陰で休む姿。あの姿が牛本来あるべきなのかな。

産後、上記したように変位が多発する農場がありました。搾乳牛はフリーストールで飼養し乾乳牛はつなぎ牛舎に移動させていました。太っている牛がとても多かったです。乾乳舎を改造し運動場を設けたとたんに、産後の変位が激減しました。

妊娠後期の妊婦さんも適度な運動が体に良いと聞いたことがあります。きっと牛でも適度に体を動かすことは健康に大事なことなのでしょう。

清潔な環境

牛は清潔で快適な環境で過ごすことが必要です。牛舎や放牧場などの環境は、牛の健康に大きな影響を与えます。

牛は綺麗好きです。子牛の時から牛の腹を濡らしてはいけないと良く言われました。

汚れている環境に慣れた牛はフリーストールでもベットに寝ないで、わざわざ通路に寝る癖があります。

十分なスペースを提供し、牛が自由に移動できるように必要があります。牛には寝る場所や休息する場所、飼料を摂る場所、水を飲む場所が必要です。

また、牛舎内の温度と湿度を適切に制御し、快適な環境を提供することも重要です。

清潔で快適な環境を提供することで、十分な採食行動を促し最大限の能力を発揮してくれるでしょう。

定期的な健康・環境診断

定期的な健康診断は、牛の健康を維持するために非常に重要です。

例えば、冒頭の写真の牛はなぜ餌を食べることができなくなって、変位になってしまったのでしょうか?

このなぜを考えて行く必要があります。

もちろん一杉縄で解決するような簡単なケースは少ないです。

なぜ、分娩したら変位になるか?

なぜ、分娩したらケトーシスになるか?

なぜ、蹄低潰瘍になるか?

なぜ、初回受胎率が低いのか?

この問題を、わたしたちは粘り強く考えていかなければなりません。

定期的な健康診断や環境診断がこれらの問題を解決するヒントになるでしょう。

まとめ

牛はアスリートです。

牛は酪農家さんの為に乳生産を行い、我が身を成長させ、さらに妊娠してより多くの乳を出すために次の出産を行わなければなりません。そのために牛は常に餌を食べなければいけません。寝るとき以外は食べるんです。

高泌乳牛になればなるほど牛から食べる時間を奪ってはいけないのです。

「食べる時間を奪う」=餌の給与量が少ない、餌押しをしない、質の悪い餌を与える、長時間餌槽を空にしておくことです。

牛から食べる時間を奪えば、採食量が減り、85,000キロカロリーを摂取できなくなります。

その結果、エネルギー不足になり様々な疾病につながっていきます。ケトーシス・変位・乳房炎。。。

なので、アスリートが思う存分に食べれる餌槽管理や居住空間を提供することがとても大切です。

一口でも多く餌を食べてもらう!

酪農家さんの技術は牛というアスリートにより多くの餌を食わせる技術なのかもしれません。

指の先がお腹の下にある第四胃の出口です。この周囲を右の腹壁に固定します。変位を治しても、この牛が本来持っている能力を最大限に発揮することは難しいかもしれません。

変位が無くなる世の中にしていきましょう!!

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